「負け組おんらいん」 @お子様

雪国に車を走らせる。幸い、新しく雪は降らなかった。
山形の冬の夜は、思ったよりも明るい。
ヘッドライトから放たれた光が、あちこちに積もる雪に反射させられる。
狭い道だが、除雪は丁寧にされており、対向車が来ても何とかすれ違いはできる。
市街地から道を外れた瞬間に道は寂しくなったが、そこから先はあまり様変わりせずに目的地に着いた。


駐車場に積もった雪は、除雪を待たずに次々に踏み固められていく。
嫌な揺れと空転。駐車スペースを確保して、ようやく一息をつく。
持ち物は、タオルと、ちょっとの小銭。外に出た瞬間の凛とした空気を期待したが、排気ガスと、観光地特有の熱気に覆われていた。
1キロ弱歩いた先の温泉は、思ったよりも強い湯だった。


翌朝、また同じ温泉に向かった。
今日は乾いた雪だ。そういえば、太陽をしばらく拝んでいない。
防砂林と民家の間に雪原が広がっていた。そこよりも少し遠くに、山が見える。
山の中腹より上は、白いガスに覆われ、ガスの境界から同じ色の粉雪がふわりふわり舞い落ちる。


まるで、空が融けているようだった。