「負け組おんらいん」 @お子様

クソみたいな宴会も終わり、ふと、今日が新月であったことを思い出す。昼に降っていた雨は止み、夜も晴れが続くらしい。
車中泊の準備を整えそのまま山梨の山奥まで。現地に到着したのは午前4時半で、自分以外にも何組か客がいた。


星空はどこまでもストイックに追い求められる。
月、季節、前後の天気、標高、光害、その他もろもろ。
関東甲信越という時点で、かなり劣悪な環境である。


人生で得られた最高のコンディションは2013年の10月。標高2000m。雨後の新月
今まで目にすることのなかった星たち。日の出の太陽が地平線に色彩の帯を誕生させていた。夜明けを迎えた薄墨の空にも、これだけの星が瞬いているなんて…。
「星が降ってきそうだった」
こんな表現をよく聞くが、自分にはその感覚は分からない。美しい空を見れば見るほど、むしろ星をもっと遠くに感じる。


しん、と冷え切った山の空気が、眠気にぼやけた私の体を引き締めてくれる。
時折強く吹く風が何よりも辛い。
三脚。
カメラを固定。
フォーカスはマニュアル。
ISOを最大にして、試し撮りをしてピントを合わせる。
セルフタイマーは2秒。
シャッターは30秒。
球状に広がる白い夜空。
視界の隅を走る流星。
吹きつける風。


…カシャリ。


その32秒は、祈りのような時間であった。
自分なりの万物への敬意であった。
無駄だ。
ピンボケだし。
構図も悪い。
表現したい何かがあるわけでもない。


ただ、シャッターを切ることが心地よくて、そのままひたすら祈りを続けた。



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