○S=Rプレイ中


ネタバレのような、そうでないような。

Cさん(http://d.hatena.ne.jp/hajic/)が絶賛されているシンフォニック=レインを半分衝動的に買ってしまいました。とてもいい文章を書かれる方なので、プレイ後散々首をひねって考えた後あの伏字にされた膨大な考察を反転して読めばどれだけ楽しいことか(そこかよ)。しばらく退屈しないで済みそうです。
さて、Cさんのような「複数の小さな物語が平行に存在しても、全体として一つの大きな完結した物語になっていなければならない」という思想を持っておられる方(大体あってますよね?)が絶賛しているのだから、平行世界全てを包括する何かか、「終わり」を担うルートが存在するのが自然です*1
アリエッタ・フィーネで愛称がアル。俺だって気付きます。ほとんど雨の降らない街に暮らす彼女が、symphonic rainを終わらせる存在となるのか…と勘繰るところですが、残念ながら、このal fineに重大なハッタリが仕掛けてあるらしいというのを、うっかりCさんの考察の一部を流し読みしたときに知ってしまったのですが。まあそれにしても重要な存在なのは間違いないでしょうけど。最初から恋人だなんて設定、複数の並行世界での恋愛を描くに当たっては基本的に邪魔ですしねえ。


○ファルルート
というわけで一人分終了。なるほど、これがアマゾンかどっかの評価にあった「痛い恋愛模様」か。裏でファルとトルタの間にどんなやりとりがあったのか気になるなあグヘヘ。痛いといえば痛いのかもしれないけど、嫌悪感とかとは絶対に違った*2。でもエロゲ・ギャルゲはkey作品しかやらないとかいう人は嫌悪感を抱くかもしれません。なにしろ感性が真逆です。keyのエロゲはHシーンは基本的に回避可能(名雪は必須でしたか?)、Airに至ってはHするとバッド行きというグレイトなルートを用意してあります。こういうことを、エロゲ全体に対するアンチテーゼだとか考えずに純粋にこっちのほうが良いと思ってやってるっぽい所にkeyの不気味さがありますが*3。そもそもファルのグッドエンディングとかkeyだったらバッドエンディングに分類するでしょう多分。


それにしても、彼女の生き方を肯定する「歌」という装置の配置は絶妙でした。劇中何回もプレイヤー自身の手で演奏(ゲームですが)をさせることによって、卒業演奏本番に重大な感情の転換点を持ってくることへの違和感を薄めていますし、本番くらいに丁度慣れて歌詞を聞く余裕が出てくるのも、偶然かもしれないけどいい演出でした。本番前日のイベントと合わせてそういう意味か!って解るようになってますし。岡崎律子さんにストーリーのニュアンスを完璧に伝えたスタッフも、それに応えてみせた岡崎さんも凄すぎます。
ちなみに、同じく偶然かもしれないが、本番で過去最高の点数が出ました。


「人間は利用しあうものだ」、確かにそのとおりだと思います。人を助けるのは、例え貸しを作ろうという打算が全くなかったとしても、結局は助けて自分が気分いいからやるんですし。いつかの、難破船だかで自分の命を投げ打って他の大勢を助けた美談だって、その人にキリスト教的な価値観(善行によって天国に行ける)があったのは間違いない。MIND ASSASSINの虎弥太が誘拐される話を思い出します。
つーか天才と呼ばれる音楽家たちなんて間違いなく変態で、不幸のどん底にいるときに逆に後世に残る美しい旋律を編み出すような人ばっかりです。普通の人間なら創作意欲なんてわかないだろ。歪んでいるといえば歪んでいるんですが、単に彼らにはそれ以外に言葉をもたないんでしょう。
でも、ラストシーン、クリスに、あなたを愛し続ける、と言った後、相手の反応を見ずに「満足そうに微笑」む姿に不安のようなものを覚えないでもないですが。


うーん、もう一度最初からやって、歌詞も読み直さないとまともな文章が書けないなあ(そうしたら一つ上の段落は丸々書き換えることになる予感がしますが)。俺はテキストを読む能力は全くなってないけど、読み解く努力もせずに誰かの考察に頼るのは間違いなく良い読者ではないはずです多分きっと。
まあ、ルート途中での俺の読み、ファルの「依頼を断れない・選択肢をクリスに任せる」といった行動は依存傾向の性格の表れで、それが演奏に悪影響を与えているみたいな予想は見事に的外れなわけでした。いやあ、いいハッタリだった。次も楽しみです。



○伏線?
トルタとフォーニが似ているところがあるという描写
妖精の転生(?)、ファルの羽根のペンダント、付録の絵本との関係
偉そうなおっさんとその娘(リセか?)

*1:俺は、物語は完結しなければならないという考えには全力で賛成します。物語って、「始める」ものじゃなくて「始まってしまう」ものなのではないかと。物語に目的があるとすれば、それは物語を終わらせること。始まってしまったものは終わらせなければならないから、せめて最高の形で終わらせるために作家は悩むんですよきっと。人生もまた然り。いいこと言った!

*2:なんか、普段から痛い痛い言っているうちにそもそも「痛い」ってどういう意味なんだろうという根源的な問いを忘れてしまってますよね。ついでに、そもそも痛くない物語なんてあるんだろうかという気もしますし。

*3:といっても俺はkeyが嫌いなわけではなくむしろ大好きで、Airのバッドエンドの美しさはエロゲ全体を見回しても類を見ないものだと思ってます。TYPE-MOON作品みたいなバカ一のHの理由だって違和感は感じるものの嫌いではないですし、はたまたアトリエかぐやみたいな徹底的な姿勢もあれはあれで美しいと思っています。何かを嫌う度胸がないのかもしれません。