みなさんこんにちは!切り身の魚のパックに書かれた「アラスカ産」が「アステカ産」に見えて、一瞬すげえ!と思ってしまったコクェモモです。
以下ネタバレ大暴走!お子様とか読むなよ?ホントにもう。



○ファルルートまとめその1
S=Rというのは言ってしまえば、変えようのない悲劇がそこにあり、基本的にクリスに出来ることはそれを受け入れることだけ*1、という残虐極まる物語です(だからフォーニエンドが異質に思えるんでしょう)。


ファルルート最後の選択肢もそう。1/19の選択肢も、一段次元が異なるものの似た話なのではないかと。こないだ書いた二種類の『NO』、『否定』と『否認』の違いですね。「…もういい」と存在から目を背けてしまうか、「ふざけるな!」と存在を一応認めながらもそれに抗おうとするか。『否定』を選んだクリス君には卒業演奏という、ファルを理解し受け入れるための最後のチャンスを見失ってしまうのでした。


ところでファルが何故クリスを好きになったかといわれれば「フォルテールの音に惹かれたから」ということになるんでしょうが、だからといってファルの愛情を「クリス自身が好きなんじゃなくて重要なのはフォルテールなんじゃないか」と斬って捨てるのは不可能です。話は変わりますが『立花隆ゼミ”INNOCENCEに見る近未来科学”・特別対談企画 瀬名秀明×櫻井圭記 オリジナルとコピーのはざまで ―ゴーストが宿る場所―』という対談企画で、ゴーストって結局なんなんでしょうね?という話題になったとき、櫻井さんが「恋愛の不可能性」について話し出したのです。ある人に、君は君の恋人のどこが好きなのか、と質問する。その人は恋人の特徴をいくつか挙げる。そこでその人の前にそれらの特徴を備えた他人を連れてきて、君はこの人を好きになったと思うか、と質問する。答えはNO。要するに人間には記述不可能な部分が必ずあって、それを攻殻ではゴーストと読んでいるんじゃないか?という話でした。「なぜ好きなのか」を書き下せるわけはない。もしくはもっと単純に、攻殻で「ゴーストダビングが不完全」なのと同様に、S=Rでは「フォルテールの音色は、原理は不明だが個人差が激しい(一説では魔力が感情だからといわれている)」のだと考えることも出来ます。俺は、ファルはごく純粋にクリスのことが好きだったのだと言っていいと思っています。


さてファルは自分がいかに酷い人間であるかをクリスに告げます。何故このタイミングでそんなことを?クリスを支配したいだけなら仮面を被ったまま彼に接し続けることもまあ不可能ではなかったでしょうし、そもそも卒業演奏前日という超重要な時に二人の仲を悪くするようなことをした意味は一見全くわかりません。
答えは『メロディー』にあります。
―――ひとつの大きな夢、自分の生きる意味…歌を歌って生きていく。そのために、恋を捨てることすら覚悟した。
なぜ恋を捨てなければならないのか?昨日聴いて、訊いて確信したこと…クリスは自分といることを幸せとしてしまった。そして彼のフォルテールの最大の魅力、悲しみを失ってしまった。取り戻す方法は、一つしかない。
―――『皮肉なもの そして 抱えてる悲しみこそが 奏でるメロディー それはとても力を持つ』
クリスは自分の前から去ってしまうかもしれないが、夢のためにあきらめるしかない。
それでも好きと言って欲しいという本音を、自分は感謝などしないなどという嘘たちの中に紛れさせた。
―――『さよなら ありがとう 言えなかった言葉たちを 奏でましょう 君のその背中へ 祈りをこめて』


…言葉に表せない感動。なんていい奴だ。なんていい話なんだろう。
ここでもkeyとはまるで違うなあと感じました。key作品は何も考えずにプレイするとすごく感動できるけど、よく考えると「これ理不尽じゃね?」と感動が薄れていきますが、S=Rでは深く読めばそれに応えて新たな感動を生み出してくれる。実際、ファルルートは二回目で初めて泣きましたから。
それにしても、トルタエンド以外のトルタはひどいことになってるんだろうなあ。自分がこの世に存在する根拠を失っちゃうんだから。フォーニエンドですらまともに出てこないんですよ?ああ心配だ。


卒業演奏後の話についてはまた明日。

*1:そもそもこの手のゲームで我々プレイヤーに出来るのは物語を受け入れることだけな気がします。「君の選択次第で結末が決まる!」というよりは、「主人公がこういう選択をとった場合はこういう結末になりますよ」が並列されているだけという。例え物語が一人称で書かれていたって、我々は主人公の視点を借りられるだけの他者に過ぎません。だからといって並列された物語世界全てを見渡す神様を気取れるわけでもなく…