電撃大賞金賞受賞作『扉の外』


ネタがないのでキャラ紹介でお茶を濁すことを試みる。何を書いてもネタバレになってしまいそうなので、それぞれの初めてのセリフとちょっとした印象を書いてみました。でもやっぱりネタバレですねこりゃ。ネタバレ万歳。



千葉紀之:
『はあ?』
主人公。趣味が麻雀ポーカービリヤード。馴れ合いを嫌い、常にシニカル(気取り)、と碌な男ではない。そのくせある女性を女神と崇め、しかも過去に接点があったことを覚えていない、などかなり行動に一貫性がない。
施しを受けることを被支配と感じ激しく拒絶するが、頭脳面で、あと狙ってかどうかは知らないが結果的には精神面でも、各ヒロインを補助する。これが彼なりの支配の手段であるともいえる。彼自身ある程度はそれに自覚的で、だが割り切ることも出来ずに悩んだりする青春真っ只中。


和泉玲子:
『落ちついて、みんな』
いわゆるツンデレ。なかなか楽しいキャラなのだが、主人公のどこがいいのかは良くわからない。
愛美に対してお前の愛は愛ではないと怒りをぶつける。では彼女自身はどうなのか?この物語から読み取るのは難しいが、多分それは詳しく描写しようとすればするほど答えから遠ざかってしまう類のものだ。というか作者は恐らくそこまで考えていない。


蒼井典子:
『このうじ虫野郎』
群れから孤立して逃げ出し、何もすることがなくなった主人公を引っぱたいた後これです。この後も延々罵倒が続きます。一発で惚れました。主人公に対しては、ツンデレの「デレ」の部分を「信頼」に置き換えたような態度。vipperども、新ジャンルだ、ほらよ。
多分全キャラ中最も頭がいい人(褒め言葉かどうかはケースバイケース)。
ちなみに、口絵のキャラ紹介での紀之・玲子・典子の三人の視線はちょっとしたことを語っている気がします。


正樹愛美:
『誰かいませんか。いたら、返事をしてください』
ルルーシュとスザクの悪いところを足して3で割ったような人。要するに、可愛すぎます。


大野亜実:
『ねえ、本当かな』
表面上、主人公と最も深く結びついたヒロイン。ただし、愛と依存と独占欲がごっちゃになってしまっています。彼女は物語終了時点でどうなっているのでしょう…。


氷室浩二:
『待てよ、とりあえず様子を見るべきだろ』
本当はいい奴なんだろうなあ。どうしようもない状況に巻き込まれて悪役にまわることになってしまった、某Fateのワカメ君みたいな人です。


結論:みんな可愛い。あと絵も可愛いです。お持ち帰りぃ!
白身魚氏の絵柄がとても気に入ってしまったのだけれど、名前に聞き覚えがない。どうやら新人らしい。んなアホな。
?参考;『[ライトノベル]07年電撃大賞受賞者の動向』 :平和の温故知新@はてな
http://d.hatena.ne.jp/kim-peace/20070213/p2
僕としてはむしろ著者さんよりも期待度高いかもしれない。



人は支配・被支配の関係の中でしか生きられないのか?*1この難問に対し主人公と傍らの少女はいかなる答えを出したのでしょうか。まあ結局『そうですねデカルト様』、以上は語っていないでしょう。
ではなぜ僕がテスト前日の忙しいはずの時間を削って長々と記事を書いているのかというとちょっとした笑えない面白さを見つけたからでござる。ござる?
主人公たちを扉の中に閉じ込め、彼らを観察していたらしい存在とその動機は最後まで明確には示されない。ここで、真に上から彼らが苦しむのを見て楽しんでいた者たちは誰なのかをあえて決めようとするなら、それは読者自身に他ならなくなってしまう。ラストシーンの宇宙の中で自分が云々の話よりも僕にはこっちの問題の方が笑えなくて面白かったですね。まあこれはこれで今更感の漂う話題かもしれませんが…。
荒廃した(らしい)、だが自由な世界への脱出、といえば僕はウテナ劇場版を思い浮かべるけど、あれと違って能動的に出てきたわけじゃないんだよなあ。無論完全に能動的な過程には成り得ないんだけどちょっと唐突。マイナス要因の一つでしょう。


ああ、大賞を読まなければ賞全体の話なんてできやしない。いつになることやら…。それにしても電撃臭が漂って来ないなあ、この大賞作品。


追記。突然思いついたけど、この作品かなりギャルゲ的かも。


さらに追記。ネット上の感想を廻ってみたけど、全部同じ人が書いてんじゃないのかと錯覚した。平面的だなあ。ダブルミーニングで。


?参考;『扉の外』 :REVの日記 @はて
http://d.hatena.ne.jp/REV/searchdiary?word=%2a%5bln%5d))

*1:富士見ミステリー文庫数少ない傑作の一つ・秋田禎信『閉鎖のシステム』の主人公、撞久屋市論悟は「人は常に他人を支配しようとしてるんだよ」と割り切りつつ、「そんなことより考えるべきことはあるだろう?」とも語ります。僕としても現実的な解決案はそんなとこだろうと考えてます