小説版CARNIVAL

本当はネタバレ注意とか書くのいやなんだけど、これから読む人の感動を一部でも削いでしまう可能性はやはり避けたい。
まあそんなこんなで。

いや、決して貶したいわけではないんで、勘違いしないで読んで欲しいんだけど。
これに泣いちゃう自分がいやだ。
瀬戸口廉也が込めたのは、希望はあるよ、という主張ではないだろうから。なにかあるとしても、私は希望はあると思いたい、という静かな叫びだ。
俺に泣く権利などない、という思いが胸に付きまとう。
完成度で言えばSWAN SONGよりも上ではないか。あっちにはあっちで膨大なテクスト量に支えられた凄みがあるけれど。
学は直接洋一になにかしてあげられたわけじゃない。理紗は学の子供が欲しいって言い出すんだけど、それも結局為されない。そうして形あるものを残さないまま*1学は、誰をも許せず、誰からも許されることのない世界に行ってしまうのだけど、その生は洋一に、彼の性癖というモチーフを通じて一足飛びに(形や因果を経ずに)繋がっている。
美しい。
あと泉。切なすぎだ。置いていかれてばっかりでさ。学め。
ところで同時に買ったのが『ジョン・レノン対火星人』だってのはどういうことなんだろう。前から欲しかったんでついでに注文したってだけで、CARNIVAL小説版のあらすじなんて全然知らなかったんだけど。魔的な力が働いたとしか思えない。

*1:というか子供については、学は無論のこと、恐らく理紗もそんなこと無理だと分かっているし、そもそも学はその時点で薬の副作用で子供を作れる体ではない。それに子供を作らせて「形あるもの」として提示して終わるような真似をしたら俺はこの本を絶賛したりしない