少女マンガとアジアの王子様 ―冬のソナタ現象に関連して

少女メディア研究の講義レポート三回目。
以前の講義レポートをご覧になりたい方はカテゴリーのほうからどうぞ。



今回の講師の方は福岡のほうからわざわざお越しになったそうです。
こんなトリビアの種的な無駄なお金の使い方は大好きです。

「少女」と言う言葉の定義

「宙吊りの無責任さで発生させた」「女学生」=「幻想共同体」
子供でも大人でもなく、男子生徒でもない女の子
投資の対象にもなりえない女の子

少女という幻想を手に入れた→だれそれの娘という実態とは必ずしも重なり合わない虚構の生

冬のソナタ基礎知識

大まかなあらすじ・・・高校のときに死んだ初恋の青年と10年後に再会し、再び愛を結ぶ純愛ドラマ
深夜枠での放送にもかかわらず、日本での視聴率は平均14%。最終回の視聴率は20%
とある調査によると日本人の38%が実際に視聴し、国民認知度は90%

ヨン様ブームと「冬ソナ」現象

ヨン様ブーム・・・2004年の3月から4月にかけて日本を訪問。羽田空港に5000人の女性ファンが押しかける。経済効果は日本で2000億。韓国で1000億と見られている。
「冬ソナ」現象・・・2002年のワールドカップを下地とした、日韓の戦後初めての友好的文化交流。中心となった層は50年代の中高年女性。→ナショナリズムジェンダーに興味深い視点を与える現象。

冬ソナ女性ファンへの見方

「ぷちナショナリズム的」・・・一時的な熱狂
「かつての美しい日本」へのノスタルジア・・・とにかく男性が女性に気を使う。現在はあまりしない?
「揶揄、侮蔑、興味本位」な捉え方・・・週刊誌などの煽り文。いい年をした女性が若い俳優に熱をあげて…
今まで対象にならなかった中高年女性の欲望→中高年世代の文化への無理解が浮き彫りに。

「冬ソナ」現象のキーワードとしての「少女マンガ」

子供の頃の御伽噺のような夢見る心。
人生に対しての虹色の幻、純粋な恋、永遠の愛といった少女マンガのようなことを夢想。

「冬ソナ」にとって少女マンガのような―が意味するもの (冬のソナタ監督インタビューより)

誰もが持っている初恋の思い出を描く。
ペ・ヨンジュンは悲しいマンガの主人公のような想像の世界の王子様として雰囲気が○
「冬ソナ」がヒットしたのは初恋に通じる純粋な心や少女マンガのような夢見る心といった普遍性が描かれていたから。

「冬ソナ」と結びつく「少女マンガ」

「冬ソナ」現象の世代=1970年代の少女マンガの世代。
1970年代・・・東京オリンピック山口百恵赤いシリーズ、メディアの転換期
第二フェミニズムウーマン・リブの流れ(「夫は外、妻は内」への意識改革)

1970年代の少女マンガが開拓したもの キーワードは主体性

「少女」を描く→「少女」が描く・・・男性作家から女性作家への変化
恋心など「少女」の内面の繊細な描写。
女性の主体性=どう告白するか=恋愛から自己表現へ繋がる問題意識
「女性」により関わってくる「性」の問題を含めた様々なジェンダー表現。

欲望の先にあるもの

戦後の理想像としての「お姫様」、「王子様」。
西欧のおとぎ話から王室まで(リボンの騎士
欧米化を理想とした戦後日本の価値意識・・・男性と日本の表現的排除=「父権社会」への挑戦。
日本人らしからぬスタイル(長い手足、まつ毛、カール巻き毛の金髪等)を持つキャラクター。
日本人のキャラクターでも金髪。60年代は黒髪のキャラが多い。
異国を舞台とした設定・・・オルフェウスの窓風と木の詩
(しかし当時連載されていた作品全体からすると異国設定の作品のほうが少数)
理想の男性・・・女性的に描かれる(男性の排除)

「冬ソナ」ペ・ヨンジュン像に現れる二面性 「西洋」vs「東洋」

チュンサン(高校生時代)

黒のイメージ、黒髪、学生服
数学が得意(統計的にアジア系に多い)、無口
父親の不在=コンプレックス父親探し(父権制の強い韓国に縛られる)

ミニョン(韓国系アメリカ人)

明るいイメージ、明るく軽いヘアースタイル
笑顔が多い、よく話す
国境に縛られない

「冬ソナ」=ユジンのドラマ

外見が変わっても「王子様」を発見するユジンの不思議な力
ミニョンを取り巻く「冬ソナ」の世界=現代韓国史をめぐり全員が記憶喪失にかかるユートピア四方田犬彦
ユジンの発見と謎解き

チュンサンの最終変化

ミニョンの外見とチュンサンの記憶を持ったミニョン
「西洋」と「東洋」の共存へ
「不在」だった「東洋」が可視化され、あこがれであった西洋と結びついた王子様
1970年代のマンガと酷似しているのではないか?

冬のソナタのラストシーン

「外島」(地中海のような雰囲気)にある「不可能の家」(ユジンのアイデア=理想の家)
二人が愛を確認しあう夢の舞台

まとめ

西洋と東洋への矛盾した共存へのあこがれ
女性視聴者自身の韓国への無知

冬ソナへの熱意と行動への原動力

中高年女性にとっての記憶再生への道(水田宗子)
自身の歴史を振り返る契機
西洋への憧れを内包したアジア不在
少女マンガは女性的嗜好、主体性にかかわるキーワード


どうでもいいけど

男性が女性に気を使うのところでこのコピペを思い出した。
[302]名無しさん@八周年 2008/03/13(木) 14:32:47 ID:3IoG5eg30
なぜ日本にはレディファーストが根付かないかについてゼミで討論した事がある。
例によって女子学生たちは日本男性批判と想像上の外国人紳士崇拝の言辞を並べていたが、
30分ほどで教授(女性)が静かに、だが力強い声で言い放った。


 「レディーが絶滅しつつある日本ではレディーファーストを普及させようがありません」


教授は海外で教鞭を執っていた時期が長いが、茶道華道ともに師範の免許を持つ人。
その教授曰く「与えられる平等や優遇をあさましく求めるのは日本女性特有の醜態」
自らレディとならずして、レディ扱いを求めるのは常軌を逸していますと。


女子学生達はその後、ひとことも喋りませんでした。