少女メディアとしての「こっくりさん

少女メディア研究の講義レポート六回目。
6月16日に予定されていた「BL小説(やおい小説)を読み解く」の講義は休講になるそうです。残念。



こっくりさんとは何か

日本では明治18年から20年ごろに最初のブーム。
下田に停泊していたアメリカ船の乗員が行っていたテーブルターニングから派生したと言う説が有力。
当時は西洋風のテーブルや椅子がなかったため竹を用いた台座を使う等、日本風にアレンジはされた。
名前の由来としては、
1.「こっくり、こっくり」と装置が傾くことから
2.岐阜県あたりでは「御傾」と呼ばれていて、それがなまった
3.テーブルターニングやウィジャ盤など世の中の様々な”理”を私たちに”告”げるもの=告理(こくり)が変化した
等が考えられている。
当時は外国で流行っている遊びとして日本人に受け取られていた→現代のこっくりさんにおける「恐さ」はなかった。
あまりに流行しすぎて大阪では禁止令が敷かれた。


恐怖の降霊装置としてのこっくりさん

テーブルターニング・・・スピリチュアル的思想をバックボーン。(人間)霊を降霊。
こっくりさん・・・流行物として取り入れられたためバックボーンがない→バックボーンを、そして「何を」降ろしているのかを解釈する必要。
1.本物の神様がわざわざ来るはずがない 
2.狐、狗、狸ともに日本の昔話では人間をだます動物として有名=こっくりさんをする人間を騙しにくる
3.憑き物信仰(動物霊がテリトリーを守るために人間に取り憑く)
といった日本的なバックボーンを取り入れて「こっくり=狐狗狸」と当て字→動物霊を降ろしていると解釈。
こっくりさんでは狐がメインになることが多い=江戸時代の日本で最も多かった神社は稲荷神社。それだけ狐は日本人になじみが深い。
こういった設定付けがなされることで、「こっくりさん=恐怖」のイメージが完成。
また時代が進むにつれ、テーブルターニング方式→杯に油→10円玉、と装置自体も簡略化。


1973年オカルトブームとこっくりさん

’73年オカルトブーム・・・超能力(ユリ・ゲラー)、予言(ノストラダムス)、エクソシスト(映画)等


こっくりさんブームの二大メディア

「うしろの百太郎」つのだじろう

井上円了「妖怪玄談」をもと(要約)に書かれる=かなりリアル。
こっくりさんのやり方を丁寧に解説。週刊少年マガジンと言う媒体の効果も相まって全国に多大な影響。
コミック版(昭和)と文庫版(平成)の変化
コミック版(P202〜)

一太郎「でも ほんとうに憑依された場合は・・・そのとりついた霊によって 近くの神社やお稲荷さんへお供物をあげ おわびにいくとか・・・それでもだめな場合は徳の高いお坊さん・神主さん・霊能者に霊をはらってもらうしかないだろうな!こんどの事件みたいなおそろしいケースは ザラにあるもんじゃないそうだ!」
その日の午後・・・みんなは教室でコックリさんをやり・・・ていねいにおかえりねがっているようでした・・・


文庫版(P72〜)

一太郎「でも ほんとうに表意された場合は・・・霊格のたかい霊能者に おねがいして 霊を はらってもらうしかないよ。そうしたってかならずなおるというほしょうは ないから 一生たたられる人も出てくる。それに霊能者をたのめばおカネもかかる とてもこどもにはらえる金額じゃないそうだよ」
これほどとめたのに みんなはその日の午後教室で おもしろがってコックリさんをやっていたようです

衝撃力が大きすぎたため、コックリさんをタブー的なものへ変更した?
こっくりさん=狐ととらえた話と、こっくりさん=人間霊とした話の2通りを収録。
後者は原点(テーブルターニング)への回帰+狐が取り憑くということにリアルさを感じず、浮遊霊や地縛霊にリアルを感じる現代人の心境変化。


「狐狗狸さんの秘密」中岡俊哉著

こっくりさんの体験談(実例)、やりかた、歴史、心霊科学的検証を収録。
マイナスイメージの話が多い。
行政機関も採用=ダウジングこっくりさんじゃなくね?
男っぽい売り文句
愛蔵版(10年後に出版)では恐怖感の薄れ、実用性の向上等プラス面の強調。


更に3年後「コックリさんの不思議」(’87)
二次こっくりさんブーム=89年
表紙の変化(かわいい)
女っぽい売り文句→小中学生女子をターゲット?
こっくりさんを促すような内容


需要者層にあわせたモデルチェンジ

[a]80年代「少女文化」研究
本田和子「異文化としての子供」
山根一眞「変体少女文字の研究」
大塚栄志「少女民俗学
少女が持つ「巫女性」→「霊感少女(=異界とアクセスする少女)」
少女は霊的な話を求める=恐怖を感じると同時に異界とのアクセスも求めている。
80年代後半、「霊感少女」をターゲットとした雑誌の増加。(95年のオウム事件を期に心霊関係の圧迫)
「ハロウィン」、「ホラーハウス」、「ホラーパーティ」、「サスペディア」
こうした新しい層をターゲットとすることで、こっくりさんのイメージも変化した。


[b]「霊界」イメージの刷新
「精神世界」ブーム(アメリカ西海岸発祥)
既存の宗教などにとらわれない→チャネラー宇宙からのメッセージを受け取る)、地球規模から宇宙へとスケールが変化。
こっくりさん(霊界)の暗いイメージがなくなる。
日渡早紀ぼくの地球を守って」から始まる前世ブーム。
「この物語はフィクションです」という但し書きが必要なくらいに加熱。