少女マンガと<男装少女>

少女メディア研究の講義レポート九回目。
この講義もテストを抜いたらあと2回とか。時の流れの速さを感じます。



少女マンガの成立過程

1902年「少女界」創刊

それまで「子供雑誌」としてカテゴライズされていたものが「『少年』向け雑誌」、「『少女』向け雑誌」として分化。当時の学校教育が男と女で分かれていたように性別雑誌によって「少年」、「少女」のジェンダーアイデンティティを広める。


少女誌におけるマンガの掲載は昭和から。当初はコマ割のない絵物語的なものが中心。
次いで登場したのがコママンガ。1ページに6から8コマ。
カメラワークがなく、全身を常に映す、コマ割が常に一定などが特徴。
当時「マンガ」には笑いだけが求められていた。題材は日常生活が中心。
代表的な作品は「くるくるクルミちゃん」(松本かつぢ)、「あんみつ姫」(倉金章介)。
これらの作品は少女が主人公であったが内容は少年誌と大差がなかった。


「銀目の女王様」(松本井知夫)でコマ割りに変化。


手塚治虫 「リボンの騎士」に見る<男装少女>

ヒロイン サファイヤ

 (講義では「サファイヤ」に統一されていたためそれに習うことにする。)
女の心と男の心をあわせ持ち、王女でありながら騎士の格好をし表向きは王子として振舞う<男装少女>。

何故男装の少女か

連載形式の長編作品であることから、外見や個性に特徴があり物語性に富む必要があった。
「クイン・モナの冒険」、「ほがらか三嬢士」のように男装をして冒険に出る先行連載作品の存在。
手塚自身が宝塚に慣れ親しんでいた→サファイヤは男役の引き写しか。

サファイヤと男キャラ(フランツ)の造形差
サファイヤ パーツ フランツ
長い、本数が多い まつ毛 短い、本数が少ない
細い、カーブ 太い、鋭角的
小さめ 大きめ
オレンジ

その他に衣服等を見てもサファイヤを構成するのは女性的な記号が多く、男性性は希薄。
容姿造形レベルでは「女」のキャラ。

男サファイヤと女サファイヤの比較
男サファイヤ――能動的、機械的

マスクによって目を隠し女性性の排除。
目を見開くことによって相手を直視。
攻撃を行うなど、行為の主体。
画面右側の位置取り。(和製マンガは右から左に読むベクトルのため、動作主体を右、結果を左におくと読みやすい)

女サファイヤ――受動的、か弱い

リボンやハートのドレスによる女性性の添加。
伏目がちで相手を直視しない。
困惑や動揺を表す水滴表現。
画面左側の位置取り。

性別越境の果て

相似に描かれる女の心だけのサファイヤとフランツ。身体的ジェンダーの差異が見られない。→
→既定のジェンダー・カテゴリーを脱構築
知力で優位に立たなければいけないフランツ主導の展開。内面レベルではフランツ(男)と同等に振舞えない。
表層的(外見的)なパフォーマンスレベルにとどまる。

身体描写

恥らう(身をくねらせる)ポーズから胸の谷間の描写への書き換え→。
↑時代変化による女性の身体への社会的タブーの弱まり+サファイヤの胸=絶対的女性の象徴。
目を女性の象徴記号=内面の男性サファイヤの描写に限界。内面を本質的に不変のものとする。

結論

心身ともに軸足は女性。変装レベルで男性に=宝塚の男役


50年代〜60年代

リボンの騎士に匹敵する作品はなし。
書き手が男性漫画家中心で少女小説を手本にしていた。
「母もの」少女小説→少女が「やさしく心清らか」であることを称える。
「悪書追放運動」→ジェンダー的に締め付け。
男装の少女を女性として成熟する前の、性的に未熟な少女として描く→不在の少年キャラクターの代理
男装=ファッション


水野英子「銀の花びら」

瞳のハイライトを変形し「十字」にすることによって、女性的なリリーの目から「やさしさ」、「しとやかさ」といった女性記号と相容れない、男性記号である「攻撃性」を表現。
身体的女性性に隷属しないリリーの内面=性別越境


池田理代子ベルサイユのばら

連載開始前

史実に基づく話は少女マンガでは前例なし。歴史ものは読者にうけないと猛反対。
ヒットしなければ即打ち切りの条件の下に連載開始。

設定

複数主人公=長期連載でも飽きさせない、歴史的事象を多面的に描く
男装少女オスカル=男性登場人物の代表キャラクター
 前作「桜京」で男装少女を描き手応えがあった。

容姿造形の変化

顎の鋭角化、丸顔から面長に、目の縮小、口の拡大等。
フランス革命をリアルに描く=物語内のキャラをリアルに描く、革命の中での内面、外見の成長
絵が緻密で情報の多い劇画に連なる表現。

キャラごとの比較

オスカル―フェルゼン・・・眉毛、まつ毛、瞳などオスカルの女性性の記号が強い
オスカル―アントワネット・・・直線的な軍服と丸みを帯びたドレス、体格などオスカルの男性性の記号が強い
上記のような二面性をもちつつ、どちらか一方の性に一元化されない曖昧さ。
ジェンダー記号のコントロール=男女のせめぎあい

性別越境

ニコラスを追い詰めるなど戦闘中の男性性。
ロザリーなどの気持ちを思いやる内面を持つという女性性。
素手」で勝てないことによる男性性の差異化、女性性の浮上。

自己確立

知的側面の発達=内面成長、知的な内面を持つ眼=男性キャラと同等の主体的存在。
同性愛的な関係→「男性に獲得され所有される客体」としての女性からの脱却→
→女性にくくられない存在性。(≠男性的という意味で)中性的な主体的存在として自己確立。

アンドレとの関係

アンドレ・・・男性性の中に女性性を持つ=オスカルの合わせ鏡
アンドレといることでオスカルの主体性が内面レベルで満たされる。
ベッドシーンでの横顔描写→眼の造形による男女差以上に両者の同質性が浮上
身体に縛られる既存ジェンダーを相対化する男女関係→互いに個として確立

オスカルの死

死ぬことによって神格化、神話性の獲得→既成の価値観に囚われない次元に引き上げられる
「男でも女でもなく人間である」

当時のマーガレット

コメディが大半。性別越境の矮小化→ベルばらの指向性の無力化。


ビーパパス少女革命ウテナ

ウテナの造形

顔=女性的
男装=フリル、短いスパッツ(素肌の露出)
彩色=ピンクの髪、薔薇色の学ラン
お姫様願望の王子様

ウテナの革命

「男でも女でも強さと気高さを失わない人間」=「王子様」を立脚点
目の変化によってオスカル的存在に?

アンシー

バラの花嫁のドレスから学ランに着替えるアンシー→世界はまだ革命されていない
ウテナからアンシーに引き継がれる性別越境


まとめ

「少女マンガ」→少年誌のマンガとは区別され異なるキャラクター
物語の内面が求められた。男性マンガがその枠組みを提示






今回の迷言

講師A「キモメンは少女マンガに登場することが許されないから秋葉原で刃物をふりまわすしかない。」
黒い・・・黒すぎるよ先生。


まぁ今回の講義で何を思ったかってそりゃ
準にゃんとインフィニティージャスティス!準にゃんに心の貞操を奪われたい!(#´ω`)」